遺伝子に優秀も不良もない

ユダヤ人や障がいを抱える人たちなど「生きるに値しない命」として、ローコストで、しかも大勢を断種する方法として、放射線照射による断種実験の開始の許可をヒムラーに求めたのは、ドイツ帝国公衆衛生局に所属し、ヴィクトル・ブラックである。ヒムラーとはナチス・ドイツの官僚で、親衛隊やゲシュタポを統率した人物である。

ヒムラーは放射線照射による断種実験の開始を許可し、1941年3月ごろ、アウシュビッツなどの収容所で開始された。

若い適齢期の男女は、その目的について何の説明もうけないまま、性器や子宮、睾丸の付近に放射線を照射されたという。彼らの多くは火傷を負い、副作用に悩まされた。ひどい場合は銃殺されたり、ガス室で殺害された。この実験は1945年1月ごろまで続いた。

1910年から12年にかけて、ウィーン大学のシュタインナッハが動物の性転換実験成功により、人も男にも女にもなれるとし、ドイツでは国家的プロジェクトのひとつとして性転換が徐々に医療化されていった。

当初、いわゆるこころの性と身体の性が一致しない人たちに対して、彼らの生殖機能を喪失させるために、彼らの局部に放射線を照射していた。(その治療はごく最近まで行なわれていた。)そういう経緯もあって、ユダヤ人、ロシア人、ポーランド人やそのほか障害を抱える人たちや性的少数者たちに対して、彼らは生きるに値しない不良の遺伝子をもつものとして、放射線照射による断種が試みられたのであろう。

1949年、わが国の厚労省は、学術目的ならかまわない、として、放射線照射による断種を認め、それは、知的障害を抱える人たちに対して問答無用で適用された。

さて、わが国では、2003年まったく実質的な審議がなされないまま、性同一性障害者性別変更特例法が全会一致で成立し、翌2004年に施行され、今日に至っている。

この法律の第3条に性別変更の5要件が挙げられている。そのなかに、性別変更の要件として、生殖機能を放棄することが定められている。

国際的には、もはや性同一性障害という精神疾患は存在しないにも関わらず、昨年秋、日本の精神神経医学会など4団体は駆け込みで性同一性障害の治療に保険を適用させた。性同一性障害の治療で保険が適用されるのは、聞くところによると、断種手術だけである。

こころと身体の性が一致しない人たちの遺伝子は残すに値しないということなのだろう。

本人の同意がある、ないに関わらず、どうやって、この遺伝子は優秀、あの遺伝子は不良であると区別できるのか?

遺伝子そのものには、優秀も不良もなかろう。

障害を抱える人たちに対しての断種(不妊手術)が基本的人権の侵害であるとして、わが国のマスコミは一生懸命報道し、国会でも問題視されているが、その一方で、こころと身体の性が一致しない人たちの遺伝子を断種をしても、それは基本的人権の侵害ではなく、合法なのだろうか?

法律で性別変更の要件とされている以上、問答無用で、生殖能力を放棄しなければならないというのは、本人の同意があるかないか以前の問題である。

月読日記

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